【消化器コラム 第2回】長引く下痢の正体とは?犬の慢性腸症(CE)への理解
こんにちは。前回のコラムでは、突然の下痢(急性腸炎)についてお話ししました。今回は、治療をしてもなかなか治らない、あるいは良くなったり悪くなったりを繰り返す「長引く下痢(慢性下痢)」について解説します。
慢性下痢の原因はどこにある?
愛犬の下痢が長期間続くと、「胃腸が悪いのだろう」と考えるのが一般的ですが、実はそれだけではありません。慢性下痢を呈する犬のうち、10%は消化管以外の疾患(膵外分泌不全などの膵臓疾患、肝疾患、アジソン病などの内分泌疾患など)が原因であることが分かっています。
残りの90%が消化管の疾患ですが、19%は感染症や腫瘍といった「慢性腸症(CE)以外の消化管の異常」であり、最も多い71%を占めるのが今回テーマとする「慢性腸症(CE)」です。
つまり、長引く下痢を根本から治療するためには、まずは10%の「消化管以外の病気」ではないかをしっかりと診断・除外することが非常に重要になります。
ネット検索でよく見る「IBD」とは違うの?
飼い主さんが愛犬の長引く下痢についてインターネットで調べると、「IBD(炎症性腸疾患)」という言葉をよく目にするかもしれません。しかし、ヒトの潰瘍性大腸炎やクローン病といったIBDと、犬の病態は本質的に異なる部分が多くあります。
そのため、現代の獣医療では最初からIBDと呼ぶのではなく、まずは広く「慢性腸症(CE:Chronic Enteropathy)」と呼び、治療への反応を見ながら細かく分類していくアプローチが主流となっています。
慢性腸症(CE)の4つの分類
犬の慢性腸症は、どの治療によって症状が改善するか(何に反応するか)によって、大きく以下のステップに分類されます。
- ① 食事反応性腸症(FRE):
食事を変更する(低アレルゲン食など)ことで症状が改善するタイプです。慢性腸症のなかで最も多く、若齢(中央値2歳齢)の犬に多く見られます。まずは食事試験からスタートするのが診断と治療の第一歩です。 - ② 抗菌薬反応性腸症(ARE):
特定の抗菌薬を投与することで症状が改善するタイプです。 - ③ 免疫抑制薬反応性腸症(IRE):
食事や抗菌薬では改善せず、消化管粘膜の病理組織学的検査(内視鏡検査など)で炎症が確認され、ステロイドなどの免疫抑制薬を使うことで初めて症状が落ち着くタイプです。中年齢(中央値6歳齢)に多く、重症度も中程度〜重度になる傾向があります。 - ④ 非反応性腸症(NRE):
免疫抑制薬を使っても十分な反応が得られない、最も治療が難しく予後が厳しいタイプです。

まとめ
長引く下痢の多くは「慢性腸症(CE)」が原因ですが、その診断には「他の病気の除外」と「治療への反応(特に食事)」を一つずつ確認していく根気強いプロセスが必要です。
これとは別に、消化管からタンパク質が漏れ出てしまう腸の病気もありますがそちらも別でお話しさせていただきます。
次回は、この治療ステップの第一選択となる「食事試験(食事反応性腸症へのアプローチ)」について、どのようにお腹に優しいフードを選んでいくのかを詳しく解説します!


















