猫ちゃんの飼い主さんはご存知かもしれませんが、腎臓病の治療薬を開発されている宮崎徹先生の著書で「猫が30歳まで生きる日」という本があります。

 

先日、飼い主さんからお借りして読むことが出来ました。

 

宮崎先生の経歴、AIMとの出会い、AIMのメカニズム、腎臓病の治療などについて書かれています。

 

腎臓病のお薬が出来る!という話を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにそのお薬の開発などについて詳しく書かれており、知らない情報もたくさん含まれていたのであっという間に読み終わりました。

 

知っていることもあれば知らないこともたくさんあったため、少しですが内容をまとめたいと思います。

 

猫はなぜ腎臓病になりやすいのか?

猫ちゃんの飼い主さんにとっては腎臓病は身近な病気かもしれませんが、実はワンちゃんや他の動物では多くはありません。

 

腎臓は血液中の老廃物を尿として体の外へと排泄してくれる働きがあります。

その際にデブリと呼ばれるゴミが腎臓の尿細管という場所に徐々にたまっていしまいます

通常、尿細管にたまったゴミはAIMというタンパク質がくっつくことによってマクロファージという掃除屋に食べられて無くなっていき病気になることを防いでくれています。

 

AIMは血液の中にたくさん含まれており、普段はIgMという免疫グロブリンにくっついて存在しています。

 

腎臓に異常を察知するとAIMはIgMから離れ(活性型AIMとなり)腎臓へと向かっていくのですが、猫ではなぜかAIMがIgMから離れにくいことが分かりました。

 

その為、時間をかけ尿細管に少しずつゴミがたまり腎臓病へと進行していきやすくなるのです。

 

 

AIMによる腎臓病の治療

AIMによる腎臓病の治療は大きく分けて2つになります。

 

① つまったゴミを急いで除去する方法

② 少しづつゴミを除去して病気を予防する方法

 

 

つまったゴミを急いで除去する方法

こちらの方法が現在開発を行っているお薬による治療になります。

 

元気や食欲が落ちている子に対してAIMを投与してゴミを除去し、症状を改善させてあげる方法になります。

 

AIMを投与しても腎臓そのものの機能が回復するわけではないので、しばらくするとまたゴミがたまってしまうので定期的なAIMの投与が必要になります。

 

イメージとしては人工透析に近い治療です。

 

また、AIMはタンパク質であるため経口摂取することが出来ず治療は注射になります。

 

金額はまだわかりませんが、抗体医薬に分類されるお薬で大量生産することが難しいお薬の為、もしかすると少し高価になるかもしれません。

 

 

少しずつゴミを除去して病気を予防する方法

 

こちらはどちらかというと予防に近い方法です。

 

若いうちからAIMを活性化させることによって、少しずつたまるゴミを除去していき病気になりにくくする方法です。

イメージとしては、排水管にたまるゴミを定期的に掃除してあげる形になります。

 

現在は様々な方法でAIMをIgMから分離(活性化)できることが分かっています。

 

 

その中の一つとしてはマルカンさんが出している「AIM 30」というフード(一般食)や特定のアミノ酸があげられます。

AIM活性化成分配合のペットフードについて

 

また2024年12月19日にAIMを活性化する成分が配合された、早期の腎臓病(IRIS ステージ1 or 2)用の療法食も発売されました。

当院でも取り扱いがございますので、試してみたい方はご連絡ください。

 

 

2025年2月の状況

2月1日より「I AM CAT」というサイトが立ち上がり、本格的に治験が動き始めました。

 

何か動向がありましたらまた報告させていただきます。

 

 

葉山一色ペットクリニック