猫の子宮内膜炎・子宮蓄膿症
子宮内膜炎とは、子宮の内膜が可能性炎症を起こすものであり、黄体ホルモン(プロジェステロン)の刺激に対しておこる子宮内膜の肥厚の後遺症として起こります。
また、子宮内腔に膿汁が停滞した化膿性疾患が子宮蓄膿症であり、その発症には黄体ホルモンの分泌が深く関与しています。
通常、猫は交尾排卵動物であり黄体期の機会が少ないため本疾患の発症は犬と比べ少ないですが、不妊交尾後の黄体期や自然排卵する猫も知られているため、その黄体期に発症すると考えられています。
子宮蓄膿症は、外陰部から排膿が認められる「開放性子宮蓄膿症」と、排膿が見られない「閉鎖性子宮蓄膿症」がありますが、閉鎖性の方が中毒症状が重い傾向にあります。
症状は、一般的に「食欲不振」「元気消失」「多飲多尿」「嘔吐」「腹部膨満」が認められますが、猫では嘔吐や多飲多尿は多くはありません。
進行すると、細菌の毒素により腎不全や播種性血管内凝固(DIC)を引き起こし、命に係わる事もあります。
診断は血液検査や、レントゲン検査、超音波検査などにより、液体貯留し腫大した子宮を確認することによって行います。
治療は、救命を考えると外科的に卵巣・子宮摘出術を行うことが推奨されます。
しかし、若齢気に発症し繁殖を考えている場合、高齢で麻酔や手術のリスクが高い場合は内科的治療が選択されるケースもあります。
黄体ホルモン(プロジェステロン)受容体拮抗薬であるアグレプリストン(アリジン)というお薬による内科的治療は猫では報告は多くは無いですが、犬と同様の方法にて有効であることが知られています。
ただし、海外薬のみであり日本国内では入手できないお薬のため、すべての動物病院で出来る治療ではありません。
手術前の猫ちゃんのお腹の様子です。
あおむけの状態ですが、おなかが張っているのが分かります。
術中の写真です。
子宮内に液体が貯留し、子宮が腫大しています。
摘出した子宮です。
左右の卵巣にも異常が認められます。
外科摘出後は腹膜炎などを併発していなければ予後は良く、通常通りの生活を送ることが出来ます。
猫ちゃんは犬と比べ、症状が出にくいため気が付くのが遅くなる傾向がありますが、避妊手術を行っていない猫ちゃんで上記のような症状が認められましたら早めにご相談ください。