フィラリアの薬は予防薬ではない!?
暖かくなってきて、ノミ・ダニやフィラリアなどが気になる季節になってきました。
ノミ・ダニの詳しい話はまた今度にしますが、葉山周辺では真冬でもダニに噛まれて来るワンちゃんが多かったので通年予防をオススメしています。
さて、フィラリア症という病気はご存知でしょうか?
名前だけ知っていて、何となくお薬を使って予防している方も多いのではないでしょうか?
フィラリアは、線虫という寄生虫の1つで心臓や血管に寄生し心不全などを引き起こす原因となります。
フィラリアの一生は以下のようになります。
図にも書いてある通り、フィラリアは蚊から感染します。
ここで一つ誤解が生まれるのですが、「蚊がいる=感染する」ではありません。
もう一つ必要になるのが気温なのです。
蚊の体内でミクロフィラリア(mf)が成長し、感染力を持つL3に成長するためには一定の気温が続く必要があります。
平均気温などから感染期間を推測する方法があるのですが、詳しい話は省略します。
興味がある方はHDUと検索していただければ色々と出てくると思います。
暖かい日が続き、蚊からフィラリアに感染すると、ワンちゃん(猫ちゃんもうつります)の体内でフィラリアがどんどん成長していきます。
目安としては、感染から90日ほどで成虫となり血管(肺動脈)や心臓に到達し、症状を表します。
そうなってしまう前にお薬を使って予防する必要があるのです。
タイトルにも記載しましたが、フィラリアのお薬は一度投薬すると1か月間フィラリアを予防できると思っている方が多いと思います。
実際に動物病院でも「予防薬ですよ」と言ってお出しすることもある為、ほとんどの方はそう思っているのではないでしょうか?
結論から言うと、フィラリアのお薬は予防薬ではなく、駆虫薬です。
厳密には、「mf」「L3」「L4」に効果のある駆虫薬です。
投薬したときに体内にいるフィラリアを駆虫することによってフィラリア症の予防を行います。
極端な話、投薬した翌日にフィラリアに感染した場合は効果をしめしてくれないのです。
なので、「フィラリアのお薬=駆虫薬」が正解になります。
では、いつからいつまでお薬を使う必要があるのでしょうか?
フィラリアのお薬は上にも書いた通り「mf」「L3」「L4」に効果のあるお薬です。
「L5」や「成虫」には効果が低く、100%駆虫することはできません。
なので、「L5」に成長する前にお薬を使ってあげる必要がでてきます。
体内に感染した「L3」が「L5」に成長するのは、感染から最短でも50日かかります。
なので、50日以上投薬の間隔があいてしまうと感染を防ぐことが出来なくなってしまう可能性があります。
投薬忘れなどによる感染を防ぐ目的で、フィラリアのお薬は1か月ごとに投薬するのが一般的です。(万が一、数日過ぎてしまっても猶予があるように)
かつ、「L3」「L4」の段階で駆虫する必要がある為、投薬期間としては「フィラリア感染開始1か月後~感染終了1か月後」までとなります。
神奈川県は(エリアによっても多少違いますが)、毎年5月初旬に感染が始まり11月初旬まで感染が続くため、「6月初旬~12月初旬の計7か月」予防する必要があります。
お薬を開始する際は、フィラリアに感染していないことを確かめてから投薬を行います。
万が一フィラリアに感染している子にお薬を使うと、ショック症状を起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
安全にお薬を使うために、必ず検査を行ってから投薬するようにしましょう。
葉山一色ペットクリニック
院長