会陰(えいん)とは尾の付け根から陰嚢(雄)や外陰部(雌)のあたりをさす場所であり、様々な筋肉や骨・靭帯などで構成されています。
会陰ヘルニアとは、この部分の筋肉が分離してしまいお腹の中の臓器(主に腸や膀胱)が飛び出してくることにより発生します。
筋肉が脆弱化する原因ははっきりと分かってはいませんが、男性ホルモンの関与・過度の加圧(いきみ)・先天的な筋肉の低下などが考えられています。
会陰ヘルニアは犬ではよく認められますが、猫ではまれな病気です。
会陰ヘルニアを発症した犬の95%は雄であり、その中でも未去勢が圧倒的に多いとされています。
そのため、未去勢の場合は去勢手術の実施も必要となってきます。
会陰ヘルニアの主な症状は
①肛門の周囲のふくらみ
②排便困難(直腸が脱出)
③排尿困難や排尿時の痛み(膀胱が脱出)
④ショック状態
などがあげられます。
排便困難などの症状は食事療法や投薬などにより便を出やすくすることによって改善することはできますが、長期的な管理は難しいと言われています。
根本的な治療には外科治療が必要ですが、再発や反対方向のヘルニアの発生なども起こることがあるため注意が必要です。
手術方法はヘルニアの穴の大きさや再発の有無などにより様々ですが、当院では軽度のものは筋肉と靭帯を用いた閉鎖を、重度のものではメッシュ(人工物)を用いたヘルニア孔の閉鎖を行っています。
この症例は、未去勢の雄で左側の会陰ヘルニアが認められました。
しぶりが重度に認められたため手術を行い、ヘルニア孔の閉鎖を行いました。
手術は、まず皮膚を切開し穴が開いている部分を確認します。
飛び出している臓器(この子の場合は直腸)をもとの位置に戻し、筋肉を縫合していきます。
筋肉同士だと力が弱く再発しやすいため、一部は筋肉と靭帯を縫合しています。
筋肉の縫合を終えたら、皮膚を縫合して終了となります。
術後は合併症の発生に注意し、食事療法やお薬などを使って経過観察していきます。
通常問題なければ術後10日ほどして抜糸を行い終了となります。
会陰ヘルニア高齢期に起こりやすいため、手術のリスクなども考慮が必要となります。
麻酔のリスクが高いと判断されれば内科治療にて経過を見るケースもありますが、症状が強く出ている場合はリスクと天秤にかけながら治療を選択していきます。
お尻のまわりのふくらみなどを見つけたら症状が出る前に早めにご相談ください。