僧帽弁閉鎖不全症について
房室弁が粘液腫様変性を起こすことにより引き起こされる僧帽弁閉鎖不全症は最も多く遭遇する心疾患です。
一般的には分かりやすくするために「僧帽弁閉鎖不全症」という名前で呼ばれていますが、そのほとんどは「変性性僧帽弁疾患(MMVD)」であります。
主な症状は、
咳・疲れやすさ(運動不耐性)・失神・呼吸困難などがあげらます。
心不全のステージについて
心不全はいくつかのステージ(重症度)に分かれており、このステージによって治療の方法が変わってきます。
ACVIMというアメリカの獣医内科学会が提唱するMMVDのステージ分類はA~Dの4段階に分かれており、またステージBはB-1とB-2に分かれています。
ステージの分類するためにはレントゲン検査・心エコー検査が必要となります。
レントゲンでは心臓のサイズ(VHS)を中心にチェックします。
その他、肺・血管・気管の状態など併発疾患の有無なども確認します。
心エコー検査では血流や心臓の内部の状態を確認します。
数値を測定し比較することにより、重症度のチェックを行います。
現在、MMVDの治療の開始はステージB-2からが推奨されています。
そのため心不全が認められてもすぐに治療が必要ではなく、検査を行ってステージ分類を行い、必要に応じて治療が開始となります。
治療について
先ほどのステージにより、推奨される治療が変わってきます。
ステージB-2からはピモベンダンによる治療が開始され、うっ血の状態や検査の数値によりACE阻害薬や利尿剤、血管拡張剤などが必要となります。
レントゲンやエコー検査によって状態を把握し、適切なタイミングで投薬を開始することが重要です。
また、食事管理も重要となります。
一般的には利尿剤が必要なステージから食事療法を開始すること推奨されていますが、療法食を食べることによってお薬の量を減らすことも可能となります。
外科手術について
心不全のステージによって手術の推奨度は変わりますが、ステージCと診断された場合の外科手術の推奨度は一番上の推奨度とされています。
しかしステージDになってしまうと、手術のリスクが高く生存率も低下すると言わているため適切な時期での判断が重要です。
ステージB-2と診断されピモベンダンによる治療を開始してから、心臓死までは中央値で1228日という報告があるため、高齢な子は心不全による死を迎える前に寿命を全うできる可能性もあるため、心臓の状態や併発疾患などをしっかりと評価したうえで、外科手術へ進むかどうかを判断することが重要です。
外科手術が必要な子に関しましては、県内の専門病院と連携していますのでご紹介させていただきます。
当院の獣医師は、心エコー実習セミナーを修了しております。
心臓病について気になることがあればご相談ください。